江戸時代を中心とした日本と西洋とのあいだの美術上の接触を検証し、異文化体験の衝撃が促した文化の変容について探っていく。さらに、それを基点にして日本文化の特性を浮き彫りにしていく。

 江戸文化というと、鎖国によって閉ざされたなかで密やかに成熟した文化と思われがちである。しかし、長崎の出島に開かれた小さな戸口からは、西洋という未知なものへの好奇心をかき立てる様々なイメージが意外なほど多く流れ込んだ。歌川広重の「東海道五十三次」や葛飾北斎の「富嶽三十六景」は、実は、江戸文化の伝統と新たな西洋イメージとの相克と融合の結果生まれたともいえる。この授業では、西洋という異文化に接触したときに発生した江戸文化の変容を、美術史の視点から考察する。